松村むつみ|医療の「あいだ」をつなぐブログ

放射線科医、医療ライターしてます。日本の医療者、病院、患者さんたち、病気に関心のある一般の方々の、「あいだ」をうまくつなげるような、そんなブログを目指しています

病院へ行ったけれど、支払った金額が安すぎて・・・・・・・

小さな子どもがふたりいるので、チョコチョコとよく病院に連れて行きます。風邪やインフルエンザ(風邪は本当は受診は要らないのですが、保育園への説明などのために受診させることがあります)、軽めのアトピー性皮膚炎、副鼻腔炎の疑いなどなど。そのたびに、近所の開業医を受診しますが、診察のたびに支払う金額が「200円や300円」であることは珍しくはありません。

 

先日、長女の吃音(それほど重度ではない)が、なかなか治らないので、来年度の就学のためもあり、川崎にある病院の専門外来を受診してきました。まず、言語聴覚士の方の問診や検査があり、だいたい三十分くらい。そのあと、しばらく待合にて待った後、医師の診察を受け、診察はだいたい二十分くらい。それからリハビリ申し込みの書類を書き、会計して終了。初診だったせいか、それほど混んでいなかったのに4時間ほどかかりました。それでもって、会計で支払った金額は700円程度でした。3割負担でしたので、保険で支払われる分を含むと、診療や検査にかかったコストは全体で2300円程度となります。これは、町のマッサージ店にでかけ、30分のマッサージを受けるよりも(マッサージ30分の相場は3000円程度でしょうか)安い金額!!

 

700円を支払ったとき、ついわたしは、病院の中をぐるりと見渡し、言語聴覚士や医師、総合受付や診療科受付、会計にいる方々などの顔を順くりに思い浮かべて、さらに、診察室の設備などにも思いを巡らせました。果たして、2300円でペイするのか? 医師や言語聴覚士の人件費にもならないのではないだろうか。普通に経営していれば、病院が赤字になるのは至極当然のことであると、ため息をついたのでした。

 

日本の医療の特徴のひとつに、「薄利多売」があります。無駄な受診をしている高齢者も多く、開業医は混み合い、開業医のほうでも、一回当たりの利益が少ないので、受診回数を減らしたり薬を減らしたりするインセンティブが働きにくい状態です。無駄な薬を飲んでいる人も沢山います。また、日本は検査代も安く、画像検査にもあまりお金がかからないので、高齢者に対する「無駄な検査」が連発され、それが検査の数を増やし、見落としや放射線科医の人手不足にもつながっています。薄利多売は、医療業界全体の疲弊を招いていて、看過しがたい問題だと個人的には考えています。

 

また、保険診療分を含んでも、価格がマッサージ以下ということは、専門知識を使った診療行為がその程度の金額にしか評価されていない(医療職は、専門知識を得るため、あるいは維持するために並々ならぬ投資をしています。マッサージにおいても皆さん努力されていると思いますが、マッサージには設備投資はありませんし大量の事務員も不要です)ということで、悲しい現実には違いありません。日本には、医療や福祉は「奉仕」であり、無償労働も当たり前、医療費が一部を除いて激安なのは当たり前という感覚があるように思います。

 

保険診療に対する対価は、厚生労働省の定める保険点数で一律に決まっていますが、診療の一回当たりの単価をもっと高く設定し、無駄な受診をなくしていく必要があるのではないでしょうか。このままでは、早晩日本の医療は立ち行かなくなるでしょう。

NHKラジオ番組、HP完成!ハッシュタグ#女性の働き方こう思う

昨日告知させていただいたラジオ番組ですが、正式なホームページできました!わたしも登場しています。


ハッシュタグ#女性の働き方こう思う ジャーナルNote

 

2月11日(月・祝)午後7時20分~55分
「ジャーナルNote」 ~追跡 女医の働く現場で~
去年相次いだ、大学医学部の不正入試。
背景には、医療の現場で女性医師が働きづらい現状がありました。
密着取材でその現状に迫ります。
★ホームページURL
http://www.nhk.or.jp/radio-b…/bangumi/mihonichi/314041.html…
Twitter (らじる★らじるのアカウントが随時番組情報をつぶやきます)
https://twitter.com/
★番組へのご意見はこちらのページで
https://cgi2.nhk.or.jp/prog/form.cgi?p=P45&tb=f1&f=P45
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NHKラジオ第一に取材いただきました!

インフルエンザなどで体調不良が続き(家族4人全員がインフルA型になりました)、久々の投稿です。

 

先日、NHKラジオ第一に取材していただきました!

 

放送は2月11日(月)19:20から35分間(インターネットラジオでも聴けます)。

ジャーナルNOTE「追跡 女医の働く現場で」

 

女性医師の働き方をめぐって、外科系の医局で長く働いている女性医師と、フリーランスで「新しい柔軟な働き方(?)」をしている女性医師(一応これがわたし)の、対照的な働き方を取り上げたラジオドキュメンタリーです。

 

遠隔画像診断や、病院・クリニックでの画像診断の傍ら、大学などでささやかに研究もする(企業研究への協力も含めて)という、いろいろなフラグメントを組み合わせたような働き方をしています。自分程度で「新しい働き方」と言っていいのか、おこがましいような気もしましたが、大病院を含めた医師の働き方が変わり、女性のみではなく、全体が働きやすくなるといいなあと思い、取材をお受けしました。

 

東京医大問題で、女性医師を中心とする「医師の働き方」に関心が高まっています。

お時間があればぜひぜひ聴いてください!!

 

www.nhk.or.jp

「ニセ医者」ってどうやって見分けるの?

ときどき摘発される「ニセ医者」。

9月には、Buzzfeed Japan Medical朽木誠一郎記者の取材により、ネット上で「内科医 工藤」と名乗り健康食品を売りつけていた男が、医師ではないことが明るみに出されました。https://www.buzzfeed.com/jp/seiichirokuchiki/ishi-sasho-blog-uragawa

 

また、以前には30年にわたりニセ医者が患者を診察していた例や、美容外科医として数千例の手術を行っていた例もあります。ニュースになるだけでもある程度の数になるので、ひょっとしたら、ニセ医者であることがわかっていない例もそれなりにあるのかもしれません。

 

とはいえ、インターネット時代となり、医師に関する情報もネットで入手しやすくなり、「ニセ医者」の生き残り戦術(?)も、以前とは変わりつつあるかも知れません。

いっぽう、「ニセ弁護士」というのはあまりききませんね。医師はアルバイトを多く組み合わせれば、年収二千万程度は見込め、講演などでも需要のある職業ですし、医師と患者の間にはきわめて大きな「情報の非対称性」があり、専門家以外の人がニセ者を見抜くのはハードルが高いので、成り立ちやすいのかもしれません。

 

では、ネット時代に「ニセ医者」を見分けるのにはどうしたらいいのでしょうか。

 

1.厚生労働省検索サイト(医師等資格確認検索)

よく言われるのは、厚生労働省の検索サイトで名前を入れて、出てくるかどうか見る、というやり方があります。これはある程度参考にはなりますが、万能ではありません。これは医師による二年に一度の届け出をもとに作成されているデータベースであり、届け出は通常勤務する医療機関によって代行されています。ですので、医療機関が届け出を忘れてしまった場合やフリーランスの医師などはひっかからないことがあり、また、職場で旧姓使用をしている場合もひっかかりません。このデータベースで出てこないからといってニセ医者と決めつけるのは早計です。

 

2.とりはえずは「ぐぐる

今の時代、誰かについて調べたいと思えば、だれしもがまずは「ぐぐり」ますよね。実は、医者というのは、ぐぐったときに、比較的名前が出てきやすい職業です。旧姓使用をしている人でも(筆者も、執筆は新姓で行っているのですが、医師の仕事は旧姓です)、医師として旧姓を使用しているのであれば、その名前が検索結果として出てきます。

検索結果は、勤務している病院のサイトのほか、主に、国内での学会発表や国内誌への論文発表が上位にあがります。あるいは、学会や専門医名簿が出てくることもあります。検索結果を見ると、その医師の専門がわかりますし、現在だけではなく過去にどの病院にいたのかもわかります。

複数の学会発表を行っていたり、専門医名簿に名前が載っている医師は、まずニセ医者ではありません。ニセ医者は、面倒くさいことはせずにとにかくお金を稼ぎたいわけですから、時間ばかりかかってお金にはならない学会発表や、専門医取得などはまず行いません。

また、ぐぐってみて、本人が「専門医」をうたっているのに、他にそれを裏付ける検索結果が得られないときには、「怪しい」とみていいでしょう。

 

3.難しいケースあれこれ

執筆などをしている人で、ペンネームを使っている場合には、その人がニセ医者かどうかをネット上で判断するのは難しくなります。大手出版社などから本を出している場合は、出版社が身元確認をしていると考えるしかありません。多くはそれで問題ないはずですが、わたしも執筆する際に、「医師免許提出」はどの会社からも求められたことはないので、百パーセントではないかもしれません。

あと、多いのは実在する医師になりすましていたり、勝手に名前を借りている場合です。実在する医師の専門分野と、ネット上のサイトでうたわれているテーマに解離がある場合は、インチキを疑ってみましょう。

また、本当に医師免許を持っているけれど、ぐぐっても殆ど名前が出てこないケースはまれですが存在します。研修医など医師になりたての場合(ただしこの場合は、大病院勤務がほとんどなので、厚生労働省の検索にはひっかかります)、ネットが発達するより前に常勤や大病院での勤務をやめている場合(年配の医師で、開業をせず非常勤で働いている場合が当てはまります)、あるいは免許はとったけれど、その後研修していない医師(ペーパー医師免許?)などがあげられますが、こういったケースはいずれも、例え本物であっても医師としての能力に問題があることが考えられます。

 

ときおり問題になるニセ医者。滅多に遭遇することはないでしょうが、何か違和感を感じたら、上記の方法で確認してみるのもひとつの方法です。

学会に「親子席」が登場

日本医学放射線学会秋季大会(10月5-7日、福岡)に行ってきました。

メインホール外のロビーに、こんなのが出現していました。託児所が一杯になってしまったのでこのような措置が講じられたそうです。

女性医師、男性医師、使用している人は決して多くはないけれどちらほら見かけました。

もっと遠隔で聴講できる講義を増やして欲しい、などの要望もあるとは思いますが(学会は遠隔地のことも多い)、女性も男性もニーズは様々で、色々な試みがなされるのはいいことだと思います。

 

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わたしが医療記事を書く理由

わたしは日々、放射線科医をしながら、メディアなどに医療についての記事を発信しています。

書いているメディアは、主に下記です。

Business Insider Japan 

松村むつみの記事一覧 | BUSINESS INSIDER JAPAN

アゴラ研究所

agora-web.jp

「発信する医師」というのは、医師の世界ではごく一部で、ネットメディアに書いたりテレビに出たりと言った行為は(わたしはテレビに出たことはないですが)、日常診療を行う上から言うと、必ずしもメリットのある行為ではありませんし、誤解を受けるリスクもあるかもしれません。

 

それでもどうして伝えよう、と、思うのか考えてみると、「情報を発信することにより、読んでくださるみなさんの検査や治療における自己決定をお助けしたいなあ」と、日々考えているからです。医療者が発信する動機は人により様々ですが、「正しいことを伝えたい」ということをちらほら耳にします。これはまっとうなことで、「正しいこと」ほどちゃんと伝わりにくいため、手を変え品を変え、試行錯誤しながら日々記事を書くわけです。

 

しかしながら、個人的には、「正しいことを伝える」だけでは満足な記事とは言えないと思っています。悩んでいたり、迷っていたりする人には共感を示すことも必要です。さらに、それに加えて、もっと大切だと思われることがあります。医療記事とは、正しいことを「与える」ためにあるのではなくて、患者さん(あるいはあなた)自身に病気や健康について考えるヒントを提供し、理解を助け、最終的な決定をお手伝いすることです。正確に知らなければ決定できませんし、理解する方法を知らなければ、やはり決めることはできません。検査や治療を受ける主役はやはり患者さん(あなた)であり、医療従事者ではありません。

また、「正しいこと」というのは、医療は科学ですので、大規模研究のデータが出る毎に刷新されていきます。今ある「正しいこと」が、五年後もそうである保証はなく、医療における「正しさ」とは、あくまで「暫定的な正しさ」にすぎません。こういった点も、わたしが、読者の方々に、単なる「正確な情報」以上のものを提供したいと思っている理由です。

 

研修医として病棟で働いた十五年ほど前、最初に衝撃を受けたことは、どうやって人生の終末を過ごせばいいのかわからない方々があまりにも多かったことです。病院にいたいのかそれともいたくないのか、どこまで治療したいのか、多くは六十歳を過ぎた人生の大先輩たちが、路頭に迷い、「先生におまかせします」あるいは、「家族の意思にまかせます」となって、自分が何を望んでいるかもわからなくなってしまう姿に、人生経験が未熟だったわたしはとりわけショックを受けました。これは、「患者さんのケアをできていない医療側の責任」というわけでは必ずしもなかったでしょう。当時は「インフォームドコンセント」という言葉がしきりに言われ出した頃で、患者さんへの説明はそれなりに丁寧になされていました。ただ、情報の非対称性(医師側が持っている知識と患者側の知識の解離が大きく、コミュニケーションなどがうまくいかないこと)があまりにも大きく、患者側が正しい知識にアクセスする方法が非常に限られていました。

 

最近は、ネットの発達により、正しい知識にアクセスできる機会も増え(病名を入力すれば、すぐに厚生労働省国立がん研究センターなどのサイトで詳細を知ることができます。多岐にわたる薬剤についても同様です)、医療以外の他の分野でも統計学などを駆使したデータをもとにした仕事が増えた背景もあり、患者さん側の医療リテラシーは少しずつあがり、治療法の選択に関して、十分理解された上で選択できる患者さんたちも増えてきているのではないでしょうか。ただ、ネットには功罪があり、怪しい情報も氾濫しています。これらの情報を、いかに冷静に取捨選択するのか。わたしは、こういった部分も、お手伝いさせていただきたいと思っています。

 

また、「正しい情報を与える」ことよりも、「助言し、自己決定を支える」というスタンスをとるのは、日々、診療現場で、画像診断をし、主治医に治療方針決定の「ヒント」「アドバイス」をする仕事をしていることと無関係ではないかもしれません。

わたしがソリッドな職場に戻らず、「パラレルワーク」を続けるわけ(1)

現在、いくつかの仕事を組み合わせて働いています。今風に言うと、パラレルワーク、と、なるかもしれません。

 

メインの仕事は、画像診断。

 

画像診断って、何するの? 耳慣れない方もいらっしゃるかもしれませんが、CTとかMRIなどの言葉は聞いたことがあるのではないでしょうか。

殆どの方は、学校検診や職場の検診で、「胸部レントゲン写真」を撮影したことがあるかと思いますが、それのもう少し難しいものを読影して、病気を診断するイメージでしょうか。

 

わたしはとある関東地方の大学病院であるときまで助教をしていましたが、二人目のこどもが生まれ、当初別の保育園に入らざるを得なかったこともあり、いくつかの仕事を組み合わせる形になっています。医師の世界にはアルバイトだけで生計を立てている人もいて、元同僚たちは、わたしが子育ての傍ら、アルバイトをしていて、専業主婦に毛が生えた生活を送っていると思っている人も多いようです。

 

画像診断は、病院で撮影された画像を自宅に置いた医療用モニターで読影する「遠隔画像診断」をメインにやっています。いくつかの病院や業者経由で、病院で撮像された画像が送られてきて、自宅で診断を下します。

 

専門は乳がん画像診断ですが、現在、わたしの仕事の半分強を占めています。乳がんの画像診断を行う放射線科医は全国にあまりいません。というわけで、遠隔地からも画像が送られてきて、細々とではありますが、乳がん診療に貢献させていただいています。意外に思われるかもしれませんが、フリーランスになって、専門の画像を読影する仕事の割合は、大学病院で働いていた頃よりもぐっと増えました。大学病院とか、基幹病院となるような大病院となると、専門の割合が多いのでは? という印象があるかも知れませんが、日本はすごーく病院数が多く、似たような機能の病院も多いので、症例もあちこちに散らばる傾向にあります。だから必然的に、よほど特殊な施設ではないかぎり、専門の仕事ばかりするというわけにはいきません(もちろん、例外的な施設はありますよ)。また、大きな施設になると、やはり雑用や会議は避けられません。大学にいたころ、子どものお迎えの時間があり、やむをえず「時短」をとっていたことがありましたが、雑用や、専門外の読影ばかりで、重要な仕事は何もできずに日々が過ぎていき、効率の悪さと空しさを感じていました。

 

一年半前から「フリーランス」という形になり、常勤ではないとできない仕事は多少あるものの、それほど大きな欠落をかんじずに今に至ります。都内の大学病院の症例を依頼されることもあるので、日々経験する症例のレベルも、それなりのレベルを保てますし、読影のような、患者さんを直接診察するわけではない業務の場合、「多くの施設を集約する」ような仕組みで仕事をすることで、仕事の質を上げることができるのを感じています。

 

まあ、今日はこんなところで終わりにします。読んでくださった方、ありがとうございました。次は、「研究」「コミュニティ」について、フリーランスの立場からお話ししようと思います。