フリーランス放射線科医松村むつみ|医療の「あいだ」をつなぐブログ

フリーランス放射線科医、医療ライターしてます。日本の医療者、病院、患者さんたち、病気に関心のある一般の方々の、「あいだ」をうまくつなげるような、そんなブログを目指しています。ときどき社会問題も扱います。

「CTとっていたけど癌が見落とされた」が、なくならない理由

定期的に、「CTを撮ったけれど癌が見落とされてしまった問題」がマスコミを賑わせます。正確に言えば、この問題のほとんどは、「CTを撮影し、画像診断医は癌の疑いを指摘したけれど、臨床医が報告書を見なかった問題」になります。画像診断医が、癌を見落とすこともあるでしょうが、それは、証拠をつかむことが難しいので、問題として表に出てくることは少ないです。

 

わたしは以前、この問題について、他のサイトで、

「なぜCTを撮っても医師はがんを見逃すのか?予防策は?」

http://agora-web.jp/archives/2029475.html

 

と、題した記事を書き、とりあえずできることとして、「カルテアラートをつけましょう」と、提案しました。

 

その後、各病院では、電子カルテ読影報告書などでのアラート機能の整備は進んでいます。中には、「余計な手間が増えて、形式的にアラートをクリックするのみで確認を怠っている人もおり、意味があるのか」と、不平を言う医師もいました。たしかに、医師の手間は増え、解決のひとつの方策ではあるものの、「根本的な問題」は、まだ解決にいたっていません。

 

CT報告書見落としの原因としてあげられるのは、

 

  ①医師の人手不足

  ②看護師の人手不足

  ③事務職員の人手不足

 

人手不足、が、三行並んでしまいましたが、これは決して冗談ではありません。医師は、入院患者も軽症、重症を含め10-20人程度、外来患者は1日で30人以上診るのが一般的です。その上で、手術や検査もこなします。これですべての報告書のあらゆる項目を見落とすなと言うのは酷な話です。看護師や事務員に、連絡事項や注意喚起を手伝ってもらいたいところですが、多くの病院はその仕組みになっていません。

 

では、この問題の解決を先に進めるにはどのようにすればいいのでしょうか。実は、①はともかくとして、②や③は調整可能なファクターです。病院からすると、看護師さんのほうが、常勤、非常勤ともに人数の増減を調整しやすく、また、事務員の方に関しても同様です。看護師さんや、事務員の方に、主治医に注意を促したり、連絡をしたり、重要な画像所見がみつかった患者さんをピックアップしておくという業務を担当してもらえばいいのです(画像診断医は、なかなかつかまらない主治医にではなく、事務職員に連絡をすれば万事オッケー、というように)。いちがいには言えないことですが、医師は事務作業が苦手なことが少なくなく(そもそも事務作業の優先順位が低い)、事務作業にかけては、看護師さんや事務員さんの方が断然正確で頼りになります。

 

というわけで、多くの職種の連携でミスを防いでいこうという話です。病院で、他職種の活動の幅が広がるのは、患者さんのためにもなることです。