フリーランス放射線科医松村むつみ|医療の「あいだ」をつなぐブログ

フリーランス放射線科医、医療ライターしてます。日本の医療者、病院、患者さんたち、病気に関心のある一般の方々の、「あいだ」をうまくつなげるような、そんなブログを目指しています。ときどき社会問題も扱います。

医師は自分の子どもを医師にしたいの?

大学入試センター試験が終わりました。当日は今年も寒くなり、横浜ではみぞれが降っていました。

最近、医学部熱が高まっていることがよくきかれます。少子化で全体の受験生は減っているにもかかわらず、医学部に行きたい人は増えていて、20年前は難易度が低かった私立医学部の偏差値も軒並み上昇しています。

最近は、ドクターXなどの医療ドラマが増えて(わたしは、知人から、子どもがフリーランス医師に憧れているのだけど、実際はどう?なんてきかれた体験があります)、医師という職業が身近になっているのかもしれません。今期は、医療ドラマが特に多いようです。そういえば、最近まで、放射線科の医療ドラマ「ラジエーションハウス」もやっていましたね。

 

また、産業構造の変化や、30年の日本の低成長も、医学部人気に影響していると思われます。医師免許は俗に「ゴールデンライセンス」とも呼ばれ、資格に守られて食いっぱぐれがない、というイメージがあるようです。医師免許で「食いっぱぐれがない」というのは、現在のところはその通りで、依然として医師は人手不足の状態が続いており、供給過多にはなっていません。ただ、厚生労働省の医師需給計算では、「医師の充足」はそれほど遠くない未来にやってくるとされています(以前、メディアに書いた記事でも指摘しましたが、厚労省は一人あたりの労働量を比較的多く計算していたので、近い未来での充足はないのではないか、というのがわたしの見方です)。しかし、今年の受験生が働き盛りを迎える20年後には、医師の充足があるかもしれませんし、また、今の小中学生が働き盛りを迎える頃には、人口減少もあって供給過多にならないとも限りません。また、医療費の増大や、国家の税収などを考えると、医師の給与が今後増える可能性は非常に低いと思っています。ですので、「お金」や、「安定」を目的に医学部に行くのはナンセンスで、「お金がなくても人のために役立ちたい、患者さんに寄り添いたい」という気持ちをもった人だけが医師を志すべきだし、これからはとくに、そうでないと成り立たないと考えています。

 

わたしの同業者の知人たちの子どもたちも、医学部を志望する子、志望しない子、子どもを医師にしたいと考える医師、そうでない医師さまざまですが、今のところ、わが子(7歳と4歳)は、「医師になりたい」とは言っていません。長女は宇宙に興味があり、月に行ってみたいようです。次女は恐竜に興味があるようですが、まだ小さいので、なんとも(笑)。「医者になりたい」と言わない子どもたちに、どこかほっとする自分もいます。わたし自信ブラック労働や過労を経験しましたし、中途半端な決意で目指してほしくはありません。とりあえず、今は、長女の宇宙への夢を応援しています。